公開日: 2025年12月14日(日)


執筆:田上恭由(たがみやすゆき)
株式会社ワイコム・パブリッシングシステムズ 代表取締役 上級ウェブ解析士
西南学院大学卒。記者を経て中古車情報誌編集部で、世界初となるデジカメ画像利用の誌面完全自動制作システムを開発。平成8年に創業し、同システムは情報誌「カッチャオ」の成長を支えた。現在はウェブ集客支援へ移行し、構築700サイト・運営支援130社超の実績を持つ。近年は生成AIによる業務改革支援や研修開発に注力。講演・セミナー実績多数。「チームがみポンランニングクラブ」会長。
大事なデータは手元にあるから安心? それは「錯覚」です。
福岡の経営者の皆様、こんにちは。
「すべてのパソコンをただの『窓』にせよ!」プロジェクト、連載6日目です。
昨日は「社内にあるNAS(ファイルサーバー)は時限爆弾だ」という話をしました。
しかし、こう反論される経営者の方もいらっしゃるでしょう。
「いやいや、手元(社内)にあるからこそ、他人の目に触れず安心なんじゃないか」
「うちは『RAID5(レイドファイブ)』という技術で、ハードディスクが1本壊れても大丈夫なようにしているから安全だよ」
確かに、目の届く場所に金庫がある安心感はわかります。
しかし、あえて厳しいことを言わせてください。
「データが1箇所にしかない」ことこそが、最大のリスクなのです。
江戸時代の商人の知恵「大福帳を井戸へ投げろ」
昔の商人の話をご存知でしょうか。
江戸時代、お店が火事になった時、彼らは真っ先に何を運び出したと思いますか?
お金でしょうか? 商品でしょうか?
いいえ、違います。
彼らは**「大福帳(顧客台帳)」を、店の裏にある「井戸」**の中へ投げ込んだのです。
なぜか?
お店が燃えても、商品は仕入れ直せばいい。建物は建て直せばいい。
しかし、「誰にいくら貸しているか」「どのお客様が何を好んで買っていたか」という**「顧客情報(大福帳)」だけは、燃えてしまったら二度と復旧できないからです。**
大福帳さえ無事なら、多少時間はかかっても、必ずまたお客様を回って商売が再開できる。
彼らは「情報は命よりも重い」ことを知っていたのです。
現代の「本社壊滅」をシミュレーションしてみる
これを現代の御社に置き換えてみましょう。
もし、不運にも本社が火災に遭ったり、水害で水没したり、あるいは大地震で倒壊してしまったとします。
- 建物: 保険金や融資で建て直せます。
- 機械・設備: お金を出せば、新しいものを調達できます。
- データ(NAS): ……どうでしょうか?
これまで蓄積してきた「図面データ」「見積書」「仕様書」「お客様とのメールのやり取り」。
これらが保存されたサーバーが、泥水をかぶったり、瓦礫の下敷きになったら。
どんなに高価なRAIDを組んでいても、物理的にそこにあったら、一巻の終わりです。
建物や機械は「お金」で解決できます。
しかし、失われた過去のデータは、いくらお金を積んでも戻ってきません。
お客様のリストも連絡先もわからない状態で、どうやって「復旧」しますか? それはもう、廃業を意味します。
Google Workspaceは「燃えない井戸」
だからこそ、私は「データをクラウド(Google Workspace)に置きましょう」と提案しているのです。
Googleのデータセンターは、現代における**「絶対に枯れない、燃えない井戸」**です。
1. 地球規模の分散保存
たとえ御社の本社が全壊しても、パソコンが全て燃えてしまっても、Googleにあるデータは無傷です。データは瞬時にコピーされ、地理的に離れた複数の場所に分散保存されるからです。
2. 映画のような厳重警備
データセンターの警備は鉄壁です。周囲は何重ものフェンスで囲まれ、施設内には、映画で見るようなレーザーセンサーや高感度検知システムが張り巡らされているとか。年間数千億円規模の投資が行われています。
3. 人間を信用しない仕組み
「中の人が見るのでは?」という心配も無用です。データは暗号化されており、たとえGoogleの優秀な技術者であっても、勝手に中身を見ることは絶対にできない仕組みになっています。
社長は、仮のオフィスや自宅、あるいはカフェに行き、新しいパソコンを買ってきて、IDとパスワードを入れるだけ。
その瞬間に、顧客リストも、図面も、過去のメールも、すべて元通り画面に現れます。
「建物はなくなったが、データはある。だから、少し時間はかかるかもしれないが、いつかは必ず仕事が再開できる」
これこそが、最強の災害対策(BCP)ではないでしょうか。
【まとめ】 「場所」に縛られるな
「手元にあるから安心」なのではありません。
**「1箇所にしかないから危険」**なのです。
物理的な「場所」からデータを切り離し、安全な「雲の上(クラウド)」へ。
それが、現代の商人が守るべき「大福帳」のあり方です。
さて次回は、クラウドにデータを移した時、一番心配なこと。
「社員が勝手にデータを持ち出したりしないか?」「内部の不正はどう防ぐ?」
この疑問に、Googleの驚くべき機能でお答えします。







