公開日: 2025年12月15日(月)


執筆:田上恭由(たがみやすゆき)
株式会社ワイコム・パブリッシングシステムズ 代表取締役 上級ウェブ解析士
西南学院大学卒。記者を経て中古車情報誌編集部で、世界初となるデジカメ画像利用の誌面完全自動制作システムを開発。平成8年に創業し、同システムは情報誌「カッチャオ」の成長を支えた。現在はウェブ集客支援へ移行し、構築700サイト・運営支援130社超の実績を持つ。近年は生成AIによる業務改革支援や研修開発に注力。講演・セミナー実績多数。「チームがみポンランニングクラブ」会長。
【冒頭】 敵は「本能寺」にあり?
福岡の経営者の皆様、月曜日の朝ですね。
「すべてのパソコンをただの『窓』にせよ!」プロジェクト、7日目です。
前回は「災害対策」の話をしましたが、今日はもっと身近で、もっと胃が痛くなるような話をします。
**員によるデータの持ち出し」と「紛失事故」**いてです。
経営者の皆様が一番恐れているのは、外部のハッカーではありません。
「手塩にかけて育てた営業マンが、退職時に顧客リストをこっそり持ち出して、ライバル店に転職する」
あるいは、
「大事なデータが入ったUSBメモリを、営業車や居酒屋で落としてしまった」
こういった事態ではないでしょうか。
今日は、Google Workspace(クラウド)が、これらのトラブルからどうやって会社を守ってくれるのか、具体的にお話しします。
1. あの「Yahoo! BB事件」を覚えていますか?
もう20年以上前になりますが、「Yahoo! BB」の顧客情報が450万件も漏洩した事件を覚えていらっしゃるでしょうか。
あの事件の原因、実は「USBメモリ(当時はもっと原始的な記録媒体でしたが)」による持ち出しでした。
USBメモリは、経営者にとって天敵です。
親指ほどの小さなサイズなのに、CD-ROMなら100枚分、顧客リストなら何十万件ものデータをコピーできてしまいます。ポケットに隠されたら、見つけることは不可能です。
だからこそ、私は提案します。
「就業規則で、USBメモリの使用を全面禁止にしてください」
「えっ、でも仕事で使うだろう?」
いいえ、全データをGoogle(クラウド)に置いておけば、データの受け渡しにUSBは不要です。
「業務にUSBは必要ない環境」を作った上で、「USBを持っていること自体がおかしい」というルールにするのです。これが最強の抑止力になります。
2. 「ログ」は、裁判で勝つための唯一の武器
それでも、魔が差す社員はいるかもしれません。
そこで重要になるのが、前回少し触れた「操作ログ(記録)」です。
Google Workspaceは、「誰が、いつ、何をコピーしたか」をすべて記録しています。
これが、万が一の時に「決定的な証拠」になります。
もし、退職した元社員が「私はやってません。データなんて持ち出していません」としらを切ったら?
ログを取っていなければ、会社は泣き寝入りです。「やった・やってない」の水掛け論では、裁判でも勝てません。
しかし、Googleのログがあれば話は別です。
「◯月◯日の深夜2時、君のIDで顧客リストがダウンロードされている。これがその記録だ」
この一枚の紙(ログ)があれば、相手を追及できます。裁判になっても勝てます。
「記録が残っている」という事実こそが、会社を守る武器であり、社員に魔を差させないための鎧なのです。
3. パソコンを落としても「謝罪会見」は不要です
もう一つ、よくある事故が「ノートパソコンの紛失」です。
酔っ払って電車に置き忘れたり、車上荒らしに遭ったり。
もし、パソコンのデスクトップに「顧客名簿.xlsx」が保存されていたら?
これは「個人情報流出の可能性」として、お客様へのお詫び、最悪の場合は謝罪会見や損害賠償が必要になります。信用はガタ落ちです。
しかし、パソコンを「ただの窓」にしておけば(Googleドライブの「パソコン版ドライブ」という機能を使えば)、パソコン本体にはデータの実体が残りません。
もし社員から「社長、パソコンを落としました…」と青い顔で電話がかかってきても、慌てる必要はありません。
管理画面からそのパソコンのアクセス権を「ポチッ」と切断すればいいのです。
拾った人がパソコンを開いても、中身は空っぽ。
「端末は紛失しましたが、データはクラウド上にあり、端末内には残っていないため、情報漏洩の事実はありません」
こう堂々と発表できます。
【まとめ】 「性悪説」ではなく「危機管理」
- USBメモリ: 使わせない環境を作る(クラウド化)。
- 持ち出し: ログという「証拠」を残す。
- 紛失: そもそも端末にデータを残さない。
社員を疑いたくはありません。しかし、人間はミスをしますし、魔が差すこともあります。また、うっかりBCCで送るべきメールをTOで送ってしまうような「誤送信」も人間ならではのミスです。
システムで防げる不幸は、システムで防ぐ。
それが、社員と会社、両方を守る「経営者の優しさ」だと私は思います。
さて、ここまで「ソフト(中身)」の話をしてきましたが、次回はいよいよ「ハード(道具)」の話です。
「これだけ高機能なGoogleを操るのに、パソコンは2万円の中古で十分」
そんな、常識外れな「Chromebook(クロームブック)」の世界へご案内します。







