公開日: 2025年12月11日(木)


執筆:田上恭由(たがみやすゆき)
株式会社ワイコム・パブリッシングシステムズ 代表取締役 上級ウェブ解析士
西南学院大学卒。記者を経て中古車情報誌編集部で、世界初となるデジカメ画像利用の誌面完全自動制作システムを開発。平成8年に創業し、同システムは情報誌「カッチャオ」の成長を支えた。現在はウェブ集客支援へ移行し、構築700サイト・運営支援130社超の実績を持つ。近年は生成AIによる業務改革支援や研修開発に注力。講演・セミナー実績多数。「チームがみポンランニングクラブ」会長。
【冒頭】 40Uの巨大ラックが鎮座する「要塞」を作っていた
こんにちは。
「すべてのパソコンをただの『窓』にせよ!」プロジェクト、3日目です。
昨日はデスクトップの整理の話でしたが、今日はもっと物理的で、もっと金銭的ダメージの大きい「黒い箱(NAS)」の話です。
正直に告白します。
私はかつて、会社に「40U(高さ2メートル近く)」の巨大なサーバーラックを導入していました。
そこに、1UのNASを2台格納。リモート用のパソコンも7台格納して配線ジャングルを作り、「自社データセンター」気取りで満足していたんです。
でも今思えば、あれは「時限爆弾」と「金欠マシン」を自ら社内に招き入れていただけでした。
1. 「RAID 6」でも安心できない、NASの御守り業務
当時、うちの会社のデータ量は約7TB(テラバイト)ありました。
これを守るために、私は必死でした。
経験上、ハードディスクはいつか必ず壊れます。
だから、1本壊れても大丈夫な「RAID 5」……いや、それでも怖い。
もし復旧中にもう1本壊れたら終わりだ。
そう思って、ディスク4本を使って2本壊れても大丈夫な「RAID 6」を組みました。
さらに、「スナップショット(バージョン管理)」という高機能な設定にしていたため、データ容量はどんどん膨れ上がり、7TBのデータを守るために10TB以上の容量を消費していました。
8TBのディスクを4本入れて、実質使えるのは16TB。
「これならまず大丈夫」と思いましたが、これが地獄の始まりでした。
2. NASの故障による業務停止を防ぐためにもう1台NASを買う
機械はいつか壊れます。
だから私は、「メインのNAS」が壊れた時のために、「バックアップ用のNAS(同じ機種)」をもう1台買いました。
バカバカしいと思いませんか?
データを守るために箱を買い、その箱を守るためにまた箱を買う。
もしメインが壊れたら、予備機に切り替えて業務を継続する……そんな複雑な運用を設計して、悦に入っていたんです。
さらに、念には念を入れて外付けハードディスクにもバックアップを取っていました。
でも、この外付けディスクがまた曲者で、小さなケースに入っているから熱ですぐ死ぬんです。
気づかないうちに壊れていて、「バックアップ取れてなかった!」と青ざめることもありました。
「機械を一つ導入すると、その面倒を見るために、また別の機械と手間が必要になる」
これが、オンプレミス(自社運用)の正体です。
3. Pマークの先生の「時代遅れ」な助言
当時、Pマーク(プライバシーマーク)のコンサルタントの先生から、こう言われました。
「データは外に出してはいけません。会社の外に持ち出すのは禁止です」
真面目な私はそれを守り、テレワークの社員には「VPN(仮想専用線)」を使って、会社のパソコンを遠隔操作させていました。
データはあくまで社内のNASにある。それを外から覗くだけ。
これこそがセキュリティだと思っていました。
しかし、これも今となってはナンセンスです。
あの有名なビール会社がランサムウェア被害に遭った原因も、この「VPN機器の脆弱性」だと言われています。
「外から社内に安全なトンネルを掘る(VPN)」というのは、裏を返せば「泥棒が入れる裏口を作っている」のと同じです。
社内に物理的なサーバーがあるから、VPNが必要になる。
VPNがあるから、そこからウイルスが入ってくる。
そして、その対策のためにまた高額なUTM(セキュリティ機器)が必要になる……。
クラウドにすれば、全部いらないんです。
データは最初からGoogleの堅牢なデータセンターにある。
VPNも、NASも、バックアップの熱対策も、全部Googleがやってくれます。
爆弾のスイッチを切ろう
私は、あんなに苦労して構築したサーバーラックも、RAID 6のNASも、すべて廃棄しました。
VPNも廃止し、古いルーターも撤去しました。
結果どうなったか?
何も困っていません。
むしろ、ファンの騒音から解放され、バックアップの心配もNASの故障の心配もなくなり、毎月の電気代とリース料が消え、会社は驚くほど静かで平和になりました。
さらに、サーバーラックも撤去したので、わずかですがオフィスが広くなりました。
もし今、NASのリース契約更新が近づいているなら、絶対に更新しないでください。
「新しいNASはもっと速くて安全ですよ」という営業トークに乗ってはいけません。
「サーバー(箱)を社内から消す」
これが、手ぶら経営の鉄則です。
次回は、NASとセットで買わされることの多い「UTM(謎のセキュリティボックス)」について。
「あれ、本当に役に立ってるの?」という疑問にお答えします。







