公開日: 2025年12月12日(金)
【冒頭】 リースで導入した「赤い箱」は、本当に必要なの!?


執筆:田上恭由(たがみやすゆき)
株式会社ワイコム・パブリッシングシステムズ 代表取締役 上級ウェブ解析士
西南学院大学卒。記者を経て中古車情報誌編集部で、世界初となるデジカメ画像利用の誌面完全自動制作システムを開発。平成8年に創業し、同システムは情報誌「カッチャオ」の成長を支えた。現在はウェブ集客支援へ移行し、構築700サイト・運営支援130社超の実績を持つ。近年は生成AIによる業務改革支援や研修開発に注力。講演・セミナー実績多数。「チームがみポンランニングクラブ」会長。
こんにちは、田上です。
「すべてのパソコンをただの『窓』にせよ!」プロジェクト、4回目です。
昨日はNAS(ファイルサーバー)の話をしましたが、今日はその「相棒」の話です。
社長、オフィスのルーターの横に、弁当箱か、もう少し大きい銀の箱(あるいは青や白の箱)が繋がっていませんか? For***とか、SA****など、あまり見かけないメーカー名がついています。
それが「UTM(ユーティーエム)」です。(ルーターのように、必ず存在するものではないため、ご導入していなければありません。)
日本語で言うと「統合脅威管理」。
事務機屋さんの、新卒で入社したばかりの一生懸命な営業の女の子から、
「決算対策でお安くしますので!」
「ランサムウェアも迷惑メールも、これ1台で完璧に守れます!」
と言われて、ついハンコを押してしまいませんでしたか?(それ実はワタシ)
はっきり言います。
その箱、本当に役に立っているか、確認したことありますか?
1. 【私の失敗】 総額82万円払って「何も守れなかった」
偉そうなことを言っていますが、私も過去に大失敗しました。
決算で少し利益が出た時、気が大きくなって導入してしまったんです。
7年リース、月額9,800円。総額82万3,000円。
導入した理由は、営業マンのこの言葉でした。
「これで迷惑メールは完璧に防げます! スマホで内線が使える機能も付いてます!決算特価で、超お得です!」
結果はどうだったか?
迷惑メールは、スイスイすり抜けてきました。
体感で1〜2割減ったかな?程度です。95%以上カットしてくれないと意味がないのに。
おまけに「スマホで内線」の機能は、「実は使えませんでした」と後から言われる始末。
導入から2年経った後。「これ、意味なくないか?」と気づきましたが、7年リースは解約できません。
リースというのは「借金」と同じです。契約した時点で、7年分の借金を背負うのです。
残りの5年間、そのUTMは電源を抜かれ、キャビネットの中で「82万円の高級な漬物石」として眠り続けました。もちろん、リース料だけは毎月引き落としされ続けて….。
2. 【業界の裏事情】 なぜ彼らは「箱」を売りたがるのか?
なぜ、全国企業に勤めていて、信頼があり、真面目で良い人であるはずの営業さんが、そんな役に立たない箱を売るのか?
答えはシンプルです。「リースだとお金が先に入り、成績になるから」です。
私たちのようなITベンダーが、パソコンやGoogle Workspaceのようなクラウドサービスを販売しても、利益は数%〜10%程度しかありません。Apple製品に至っては利益ゼロです。
これでは商売になりません。
でも、UTMのような「自社ブランドの箱」や「リース契約」なら、ドカンまでは行かなくても、まあまあなと利益が出て、営業成績になります。
だから彼らは、必死で「箱」を売るのです。
また、箱があるとわかりやすい、という点もあるでしょう。ソフトウェアやクラウドサービスは、画面で見ることはできても実態がありませんが、UTMは機械がそこにあるので、安心感が何となく出ます。
「クラウドは漏洩の危険がある!」「データは社内に持っておかないと!」と不安を煽り、「データは社内においておかないとセキュリティが」と言って、トータルで高額な導入提案、それを守るためのUTM、さらに保守契約……と、「リース地獄」のセット商品を提案してくるのです。
3. 【電気代の罠】 その箱、年間10万円食ってますよ
コストはリース料だけではありません。電気代もバカになりません。
私がNASを2台(メインとバックアップ)とUTMを動かしていた時、消費電力は合計でおよそ500W程度あったと推測されます。
24時間365日つけっぱなしです。計算してみると、電気代だけで年間約10万円、月額約8,000円という計算になります。
今、私はGoogle Workspaceを社員6人で使っていますが、月額料金は合計で約1万円です。
NASとUTMの電気代だけで、クラウドの利用料が払えてしまうんです。
【まとめ】 「戦艦大和」を作るのはやめよう
もし今、UTMのリース契約更新が近づいているなら、絶対に更新しないでください。
営業マンの人柄や、一生懸命さにほだされてはいけません。お金を払うのは会社であり、そのお金を稼いだのはあなたの会社の社員が頑張って稼いだお金です。
今の時代に、中小企業が社内に重厚なサーバーやセキュリティ機器を置くのは、軽量な戦闘機が飛び交う現代戦に、「戦艦大和」を作って挑むようなものです。
でかくて、金がかかって、動きが遅い。そして、軽快なクラウド(戦闘機)を武器に戦ってくる相手にあっという間にやられてしまいます!
機器は入れたくはないが、「どうしても社内システムの関係でUTMが必要だ」という場合は、「クラウド型のUTM」もあります。世界的企業が提供して、数百万社が利用して稼働実績を積んでいる月額数百円から使えて、いつでも解約できます。
正直申し上げて、7年リースを組む必要なんてどこにもないのです。
「社内のファイルを全部クラウドに上げ、謎の箱を社内から消す」
これが、変化の激しい時代を生き抜く、小規模企業にとっての、身軽で変化の激しい時代の経営の鉄則です。
さて次回は、このUTMという謎の箱の役割をご紹介します。己を知り敵を知らねば、本当に正しい判断ができません。今回同様、わかりやすく機能を説明します!







