【第9回】今日から始める、身軽IT経営=「すべてのPCのただの窓化」への第一歩。まずは心のOSを更新せよ

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【第9回】今日から始める、身軽IT経営=「すべてのPCのただの窓化」への第一歩。まずは心のOSを更新せよ

2025.12.17

公開日: 2025年12月17日(水)

執筆:田上恭由(たがみやすゆき)
株式会社ワイコム・パブリッシングシステムズ 代表取締役 上級ウェブ解析士
西南学院大学卒。記者を経て中古車情報誌編集部で、世界初となるデジカメ画像利用の誌面完全自動制作システムを開発。平成8年に創業し、同システムは情報誌「カッチャオ」の成長を支えた。現在はウェブ集客支援へ移行し、構築700サイト・運営支援130社超の実績を持つ。近年は生成AIによる業務改革支援や研修開発に注力。講演・セミナー実績多数。「チームがみポンランニングクラブ」会長。

【冒頭】 捨てられないのは「サーバー」ですか? それとも…

おはようございます。

「すべてのパソコンをただの『窓』にせよ!」プロジェクト、100日連載の9日目です。

これまで8日間かけて、

「NAS(ファイルサーバー)を捨てる」

「UTM(謎の箱)を捨てる」

「高いWindowsパソコンを捨てる」

と、御社のオフィスにある物理的な「箱」を捨てる提案をしてきました。

「理屈は分かった。コストが下がるのも、安全になるのも分かった」

「でも、なんとなく踏ん切りがつかない…」

そう感じている社長。その正体は何だと思いますか?

捨てられないのは、目の前にある機械ではありません。

社長ご自身の頭の中にある、「昭和・平成から続く、所有の呪縛(心のOS)」です。

今日は、道具を変える前に、まず「社長の思考」をアップデートしていきましょう。

1. 高級車を「所有」した知人、「利用」した私。20年後の差額は?

少し、私の個人的な話をさせてください。

ある知人の経営者が、高級セダンを5年ごとのリースで乗り継いでいましたが、最近売り上げが芳しくなくなり、事業をM&Aで売却しました。

一方、私は社用車を購入せず、必要な時はカーシェアやレンタカーで済ませてきました。最近は車に乗れなくなった親父のカローラを無料で譲り受けて社用車にしています。

ふと、計算してみたんです。

リース代、ガソリン代、駐車場代、車検代…。

高級車をリースにした場合の20年間のコストと、私がカーシェア等で済ませたコスト。

その差額は、なんと「約2,300万円」でした。

もし、キャッシュで2,300万円があったら….。経営者なら、このキャッシュがどういう意味を持つのか、お判りになるかと思います。

これは車の話ですが、ITも全く同じです。

「サーバーを自社で持つ」「ハイスペックなMacを全社員に買う」

別の知人の同業者は、大企業の案件ばかりですごく成功されましたが、利益が出たら最新のMacを社員に与えていました。

20年前の話ですが、その時はそれで社員の士気も上がったでしょう。

しかし、令和の時代の社員たちに、それは通じるでしょうか。

福岡市のような都心では、3,000万円で買えたマンションが、たったの数年間で5,000万円クラスに上がりました。夫一人でローンが組めた時代は昔の話で、いまは共働きで2人でローンを返し続けないといけない時代です。「そんなお金があるなら、俺たちのボーナスを増やしてくれ」と思うに違いありません。

私自身にも所有していたことによる大きなコストがあります。ファイルサーバーやNASを平均7年ごとに買い替えていました。中古品で安く抑えてはきましたが、それでも7、800万円程度にはなります。この金額に加えて、私がこれに費やした管理にかかった時間は、見えないコストとしてロスしています。もし同じ作業をSEに外注していたとしたら、月額5万円として、20年間で1200万円になったでしょうか。このように、所有のコストは、20年で約2,000万円と試算できます。

2. 「見栄」にお金を払う余裕は、もう日本にはない

30万円のMacを使っている社員と、3万円のChrombookを使っている社員。

生み出す成果物に、10倍の差があるでしょうか?

クリエイティブな制作や開発など、Macでしかできない仕事をしている方を除き、ほとんどのビジネスマンは、メールとチャットとブラウザで仕事が完結しているのではないでしょうか。

もしそうならば、WindowsPCやMacを使う必要は見当たりません。Chrombookでことが足ります。

資材高騰、人件費の高騰、そして社会保険料の負担増。

これからの日本で経営していくには、「1円でも多く身軽にしておく」ことが生存条件です。

所有欲を満たすためにお金を使う時代は、終わりました。

3. AI時代、価値は「作ること」から「動かすこと」へ

さらに、時代は恐ろしいスピードで変化しています。

私のいるWeb業界やシステム開発業界では、今、革命が起きています。

これまでは「ホームページを作る」「システムを作る」こと自体に大きな価値がありました。

しかし、生成AIやローコード・ノーコードツールの登場で、誰でも安く作れるようになりつつあります。

となると、「10人がかりで3ヶ月かけて作ったシステム」が、AIを使って「5人で一か月」でできる時代がもう来ています。ホームページも同様に、しゃべるだけでそこそこのものができる時代がすでに来ています。

では、どこに重点が移るのか?

それは「素早く作って、素早く実行して変化へ対応し、使えなくなったら捨てる」です。

10人で3カ月かかるシステムを外注して作ると、3,000万円くらいかかりますが、2人で1か月なら、200万円程度でしょう。外注せずに、社内で作れるようになるかもしれません。

となれば、もう、システムは保有ではなく、どんどん新しいものを作って、使えないものは捨てて、使えるものだけを残す、というように、パラダイムシフトが起こる可能性があります。

AIに何を作らせるか指示し、できたものをどうビジネスに活かすか。

高いお金を払って重厚長大なシステムを「所有」してしまうと、変化のスピードについていけません。

作ったシステムが、実はライバル会社がもっといいものを作ってきたとしたら、「せっかく高い金を出して作ったんだから」と、持っている時代遅れのシステムにしがみつくことになります。

4. オフィスも、サーバーも。「所有」から「利用」へ

心のOSを、こう書き換えてください。

「所有(アセット)はリスク。利用(サブスク)こそが正義」

  • オフィス: 一等地の自社ビルより、身軽なテナントオフィスやシェアオフィス。
  • IT: 自社サーバーや自社開発ではなく、いつでも解約できるクラウド(Google Workspace)やオープンソース、ノーコード・ローコード・AI開発。
  • パソコン: 資産価値のある高級PCより、使い捨てできるChromebook。

「冷たい」のではありません。

変化の激しいAI時代において、会社を存続させ、社員(やその家族)を守るためには、「いつ何が起きても大丈夫なように、荷物を降ろしておく」ことが、経営者の最大の責任なのです。

【まとめ】 昭和の頭では、AI時代を戦えない

社長、パソコンのOSは最新にしていますよね?

では、社長自身の「心のOS」は、いつのバージョンですか?

「いい車に乗ってこそ一人前」「自社サーバーがあってこそ安心」

もしそう思っているなら、それは昭和時代の思考です。

そんな古いOSでは、令和の時代に、AIを利用してビジネスが高速回転していく時代には対応できません。

今持っているものに縛られない経営。

今日、心のゴミ箱に「所有への執着」を捨てて、「空にする」ボタンを押しましょう。


さて次回は第1章の最終回。

心のOSを更新したあなたに贈る、「手ぶら経営」の真髄。

データを手元に持たなければ、失うものは何もない。究極のリスク管理についてお話しします。

FAQ

Q1. コスト削減やセキュリティ向上の理屈は理解できましたが、なぜか自社サーバーやハイスペックPCを手放すことに躊躇してしまいます。なぜでしょうか?

A. それは、社長ご自身の「心のOS」がまだ「所有」に価値を置く時代のままだからです。 目の前の機械が必要なのではなく、社長の頭の中に「自社で資産を持つことこそが安心・信頼の証」という、昭和・平成時代の思考(古いOS)が残っていることが原因です。令和のAI時代において、この「所有の呪縛」は経営の足枷となります。まずは道具を変える前に、思考をアップデートしましょう。

Q2. 社員の士気を上げるために、利益が出たら最新のMacのような良い機材を与えたいのですが、それは間違いですか?

A. クリエイター職以外では、むしろ「時代遅れの施策」となる可能性が高いです。 20年前なら効果的でしたが、現在は物価高や社会保険料の増大により、社員は「高価な道具」よりも「実質の給与(ボーナス)」を求めています。 メールやブラウザ業務が中心の社員に30万円のPCを与えても、3万円のChromebookと成果物に大差はありません。その差額を給与に還元するほうが、現代の社員満足度につながります。

Q3. 「所有」にはどれくらいのコストロスが隠れているのでしょうか?

A. 20年間で「約2,000万円以上」の差が出ると試算されます。 これは車の例ですが、高級車をリースで乗り継ぐのと、カーシェアを利用するのでは20年で約2,300万円の差がつきました。ITも同様です。サーバーの買い替え費用(約700〜800万円)に加え、管理にかかる人件費や手間(約1,200万円相当)を合算すると、所有コストは莫大です。このキャッシュを事業投資に回すほうが、経営上のメリットは大きいはずです。

Q4. AI時代において、なぜ自社で立派なシステムを持つことがリスクになるのですか?

A. 変化のスピードに対応できず、「サンクコスト(埋没費用)」に縛られるからです。 かつてはシステムを「作ること」に価値がありましたが、AI時代は安く早く作って「動かすこと」に価値がシフトしています。 数千万円かけて重厚長大なシステムを「所有」してしまうと、より優れた技術が登場しても「高かったからもったいない」と乗り換えられず、結果としてライバルに負けてしまいます。「作って、試して、ダメなら捨てる」という身軽さが生存条件です。

Q5. これからの時代、経営者は具体的にどのような指針を持つべきですか?

A. 「所有(アセット)はリスク。利用(サブスク)こそが正義」と書き換えてください。 オフィスは自社ビルよりシェアオフィス、ITは自社サーバーよりクラウド(Google Workspaceなど)、PCは資産価値のある高級機より使い捨てできるChromebookへ。 「冷たい」のではなく、いつ何が起きても会社と社員を守れるよう、荷物を下ろして身軽にしておくことこそが、現代の経営者の責任です。

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